
藍や茜、紅花といった染料の名前を現代でも耳にすることは多いと思います。それは、いにしえの時代から、人が布や糸などを染めるのに利用していた植物の名前です。
人は長い間、植物など自然から採れる染料を利用し、染め物をしていました。しかし近現代になり、自然由来の染料よりも手軽に利用できる化学染料が誕生し、徐々に昔ながらの染色方法は廃れていきました。
そんな中、山崎斌(あきら)さんという方が昭和に入ってから天然染料で染める手法を復興、体系化しました。そして化学染料に対して天然染料で染める手法を「草木染め」と命名。今ではこの名前を多くの方が目にし、耳にするようになりました。

「草木染め」は天然の植物(たまに虫や貝など)から取り出した染料を使って布や糸を染める染色方法です。植物の葉や茎、根、花など、ほとんどの植物を染料にできます。身近なところでは玉ねぎの皮や紅茶などを使って染めることもできます。
草木染めで染めた布は、化学染料を使って染めた布にはない、優しく深みのある色に染まります。淡く薄い色味を想像する方が多いようですが、藍染めは濃い紺色に染めることができますし、クチナシや茜などを使っても濃く染めることができます。ただ、染料によっては繰り返し染めないと濃い色合いにならないものもあります。
たとえば「紫根(しこん)」。紫色に染めることができる植物ですが、濃い色に染めるためには多くの量を必要とします。そのため、古代は位の高い人しか着ることがでない「禁色(きんじき)」だったそうです。(なかなか濃い色には染められませんが、淡くても気品ある色に染まるのはさすがです)
また、一般的に草木染めで使用されている染料の中には、古くから漢方薬や民間薬として利用されているものもあります。有名なのはウコン、ヨモギでしょうか……。紅花は昔から保温効果があるということで女性の下着などにも利用されていたようです。以上のことから草木染めのことを「着る漢方」という人もいます。
ただ、草木染めもいいことばかりではありません。まず、天然の染料ですから常に同じ色が出るとは限りません。その日の気温や湿度、染液の温度などに左右されます。また、汗や日光、洗濯(石鹸)に弱く、色が変化しやすいという欠点もあります。昔の人は色が変化したり色あせたりしないように工夫しながら着たり、色あせても染め直したりしていたようです。
現在はどうすれば色あせないように使用できるか、といった知恵はあまり残っていません。とはいえ、シルクなどは「だんだんと変化する色に深みがあって良い」と言う人もいますし、ちょっとした変化で同じ色が出せないところに研究する面白みがあるとも言えます。
正美屋では普段の生活ではなかなか手に入りにくい、伝統的な植物染料(乾燥)を販売しています(商品一覧はこちら)。

草木染めをすると決まって聞かれるのが「でも、色落ちするんでしょう?」です。
植物から染料を取り出し、布を染めます。でも、それだけではきちんと染まってはくれません。想像してみてください。白い服に料理の汁が飛び散ってしまったときのことを…。そのときは色がつきますが、きちんと洗濯したらシミは落ちますよね? そんな感じで植物の染料も落ちてしまうんです。
では、どうやって布に染料の色を留めるのか? それには「媒染剤」というものを使うことになります。紅花染めなど、媒染剤を使わない染料もありますが、多くの植物染料は媒染剤を使うことで色が鮮やかになり、色素が繊維に定着します。
これは、植物に含まれる色素が関係しています。植物の中にあった色素は一旦、水に溶け出します。しかし、その状態はとっても不安定。色素は水から布に移動しても不安定なまま。これをしっかり安定した状態にするのに、金属の成分が溶けた水を使います。
不安定な状態だった色素は金属の成分と結びつくことで、安定した状態になり繊維の中に定着します。結びついた金属の性質によって色味も多少変化します。アルミだと明るく、鉄だと黒みがかった感じになるようです。
媒染剤でよく使用されるのは「ミョウバン」です。料理にも使われるミョウバンは家庭で使用しても取り扱いに過敏になることなく、安全に安心してご使用いただけます。 ミョウバンを媒染剤として利用した場合は、「アルミ媒染」となります。他の種類の媒染剤をご希望の方はお問い合わせください。
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